眼鏡をかけるのは、溺愛のサイン。
まだ、くくっと堪えるように笑っている彼は、そのまま私の足首を掴むと靴を履かせてくれた。
驚くことにその靴は、私の足にぴったりでびっくりしたのだった。
「……可愛い」
「そうだな。新作だそうだ」
淡いピンク色の靴に思わず見惚れる。このブランドはリボンとピンク色を主にしたデザインで人気なのは知っていたけど、可愛い。
「運命みたいだな。貰っても困るが、可愛いから部屋に飾ろうとでも思っていた靴が、君にぴったりとは」
彼も驚いて目を見開いてる。眼鏡越しならなぜか穏やかで怖くない。
というか、私の前で傅く姿はまるで王子様みたいで私の体中の血液が沸騰する。
「う、嬉しいんですが、今から会社の面接なのでこんな可愛い靴履けないし、手持ちが少なくて」
「俺は見返りは求めていない。君が履くために貰ったようなものだ。それより面接場所は? 同じ駅なら送っていくが」
「二駅先です。場所は電車の中で携帯から地図を確認しようと思ってまして」
「……」
顎に手を置いて、何か考えだした。
もしかして私のいい加減な取り組み方に呆れているのかな。
焦って今すぐ逃げ出したい私に、彼は思ってもいない言葉を発した。
「その会社は『Adorable』?」