眼鏡をかけるのは、溺愛のサイン。
『可愛い』
そのまま面接というより、電車のことやその日の事故について話して終わった。
私は主にネットで展開していく新しい仕事についてのスケジュール管理やメールや電話の対応、そして報告だ。
第一秘書の片野さんという男性もいて、その方のサポートがメインになりそうだった。
40階立てのオフィスビルの35階から最上階までが『Adorable』のオフィスらしい。最上階の社長室の窓からの見晴らしには言葉を失った。
ビルの森の頂上に建っているみたいな爽快感がある。
こんなすごい場所で自分が秘書なんて夢のまた夢だと思っていた。
見上げたエレベーターのパネルを眺めて、なぜか身震いしてしまう。
「高所恐怖症か?」
「わ、あ、おはようございます。違います。武者震いです」
エレベーターを待っていると隣に社長が現れて思わず二歩横に下がる。
階段で上がろうかと、そちらに目を向けるとなぜかすごく睨まれた。
「今日も電車で行けば、君に会えるかと思ったが止めて正解だった」
「あの日は、偶々です」