わたしが小説を書くように
 帰り際、いつも先生は、わたしを食事に誘った。

 わたしはそれを断り続けた。


 先生と、自分を試していたのだ。


 わたしの中には、先生に対する好意と好奇心はもちろんあった。

 でも、今、そうなってしまうべきではないという計算もしていた。


 先生は、性格上、障害のあるほうが燃えるだろうと思っていた。

 それに、簡単に手に入るものは、誰だって大切にしない。


 誘惑にあっさりと負けてしまってはだめ。

 好きなら好きなほど、タイミングをはかるべし。


 わたしは頭の中を先生でいっぱいにしながら、研究室を後にしていた。



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