わたしが小説を書くように
はじめての夜
 わたしの想いは、先生に決定的に伝わった。
 伝わりすぎた。

 あの一夜から、先生は、明らかに調子に乗った。

 わたしなんかを料理するのは、このニ十歳近く年上の男のひとには、たやすかった。


 自分に近づいてくる女性は、すべて自分の獲物。

 先生は、そう考えているひとだった。


 わたしは、自分のことを慎重だと思っていたけれど、
 残念ながら、誰よりも軽率な人間だった。

 後悔はしたくないけれど、そういった思いが、ときどきわたしの胸を刺す。


 だって、わたしにとって、はじめてのひとだったのだ。
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