わたしが小説を書くように
「ねえ、先生」

「うん?」

「わたしたちのこと、噂になってはいない?」

「俺の知る限り、なってない」

「よかった。心配だったから」

「噂になることが?」

「先生を、誰かに取られてしまうことが」

「そんなこと、あるわけがない」

「先生は、学生に好かれるから……。
 昨日も、先生素敵ねって笑い合っている女の子がいたわ」

「俺は、あなたに夢中で、目移りなんかできない」

「そんなこと、信じられない」

「もう一回したら、信じられるようになる」

「なにを?」

「口では言えないようなこと……。
 言わせたいの?」

「変態」

「あなたこそ」

「意地悪……。んっ……」


 耳の奥に残る、会話。

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