わたしが小説を書くように
 その本をなにげなく手に取り、読み始めてすぐ、「なんだろうこれは」と思った。

 日本語で書いてあるはずなのに、さっぱり意味がわからない。

 これは、わたしの頭が悪いからなのかな、と思って、しばらく放っておいた。

 中学受験のとき、思い出してもう一度チャレンジしてみた。

 やっぱりわからなかった。なんでなんだろう。

 そのときは不思議で仕方なかったけれど、今のわたしが読んでも、完全には理解できない世界なのだから、しょうがない。

 畑中靜司というひとは、最近になるまで、そういうわかりにくいものばかり書いて暮らす思想の作家だった。

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