わたしが小説を書くように
「よかったー。間に合った」

 先生は肩で息をしながら、こちらに近づいてくる。

 途中で編集者につかまってしまい、姿が見えなくなる。


「どうしてここに……」

 わたしは、呆然とつぶやく。


「松島さんって、畑中先生の教え子だったんですよね?」

「あぁ、まあ、そうです」

「ご挨拶しておきましょう」

 編集者に背中を押される。


「お久しぶりです」

「久しぶり」


 何か月ぶりだろう。

 先生は、やっぱり痩せて、素敵になっていた。


「ちょっと、出ようか」

 先生のあとについて、中庭に出る。
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