わたしが小説を書くように
「妻と、離婚が成立した」

「え?」

 なぜ、それをここで、わたしに言うの?

「妻は、人並み以上に働いて、自立しているし、子どもももう成人になる」

 だから、と先生は首筋を赤く染めて、

「あなたを傷つけたことは謝る。
 僕にも無神経なところがたくさんあったと思うし、反省の言葉しかない。
 自分勝手な人間だってことも、昔から自覚している」


 それでも、あなたが好きだ、と言う。

「戻ってきてはくれないか。
 あなたさえよければ」

 これは、僕なりのけじめだ。

 先生はそう告げてから、わたしを不安そうに見つめた。

 
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