わたしが小説を書くように
「いつでも、困ったことがあったら、連絡してきてください」

 先生は、少し他人行儀な口調をつくった。

「しばらく転居はしないつもりだし、番号変更なんて、面倒だから」


 ケータイに、まだ先生の番号とアドレスが残っていることを、見透かされているようだった。


「さあ、これからあなたは、主役なんだから。
 僕も三次会くらいまでは付き合うつもりだけど、酒の飲み方に気をつけて」

 それから……、と先生が言いかけたとき、

「あっ、松島さん、こんなところに!」

 編集者に見つかってしまった。


「畑中先生、ナンパですか?」

「違うちがう。先輩作家としてのアドバイスをしてたんだよ」

「松島さん、まだ取材が残ってるんですよ」

「あっ、すみません、今まいります」


 どうなってしまうかは、まだ今はわからない。

 けれど、前を見て、自分をもう少し信じて、進んでみよう。


 それは、わたしが小説を書いているときに、いつも思うこと。

 だから、この小説のタイトルは……。





『わたしが小説を書くように』
                
                   <完>
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