わたしが小説を書くように
 あるとき、テレビで作家の特集番組をやっていた。

 わたしは見るともなしにそれを見ていた。

 男性の顔に焦点が合ったとき、わたしは息を止めた。

 美青年、としか言いようのないひとだったからだ。

「ママ、このひと知ってる?」
 母に、顔が赤くなっているのを気づかれないようにして、きいてみた。

「ああ、畑中静司。数年前から評判になってた作家でしょ」
 なんでもないことのように、母はいった。
 
 理解できない本と作者が結びついた瞬間だった。
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