優しい調べ
村外れにある。とある大きな木。その根本に腰を掛け男は笛を奏でていた。

広く澄んだ空。穏やかに流れる時間。


僕は彼の膝に頭を載せてトロンと目を閉じた。

だって瞼がとっても、とっても重いんだ。

穏やかな風と踊るように柔らかな音色が辺りを包む。

そこへ、陽気な香りを見にまとい男の元へ駆けてくる少女が一人。
まだ小さな人影だけど僕にはわかるんだ。

僕は彼に早く知らせたくて立ち上がる。
「わん!わん。わわん!」
ねぇ!あの子だよ。あの子が来るよ!

教えているのに彼は相変わらず笛を吹いている。でも気のせいかな?
顔がさっきより赤いんだ。

だんだんと近づく影は僕が予想した通りの人。
息を弾ませ頬を赤く染めた彼女がニコリと微笑み、僕の頭を優しく、何度も何度も撫でてくれた。僕は嬉しくなってパタパタと尻尾を振った。

少女は彼の隣にちょこりと座る。
僕は今度は彼女の膝に顎を載せて、チラリと2人を盗み見た。
彼はやっぱり何も言わずに笛を奏でてる。
でも、僕は知っている。彼女が側にいると笛の音色はいつもより優しくなるってね。
 
なんでかな、2人といると
僕は、とてもふわふわした温かい気持ちになるんだ。

くわ~と僕はあくびを噛み締めた。
ほら、優しい調べが僕を夢へと誘ってる。


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