ドクターと甘い恋
「れーな、頑張るよ」


痺れを切らした陽向先生はわたしをうつ伏せにして、はるくんに固定するように言った。

でも、それも嫌ではるくんの手を拒む。



「嶺菜、いい加減にしな」



いつもより低い声の陽向先生。


でも、先生にはわかんないもん…っ。

この痛みもこの苦しさもこの辛さも。



こんなに苦しいことしても、5年後の生存率は低い。

なら、こんな治療に意味があるのかな。




「陽向先生には…わかんない、よ」


「……嶺菜?」



わたしの小さなつぶやきにトレーに注射器を戻す。


涙がぼろぼろとこぼれて、わたしの心のストッパーも止まらなくなった。



< 44 / 140 >

この作品をシェア

pagetop