佐藤さんの憂鬱。
人に無関心な私が男の人の中で唯一心を許し、愛した人は離れていってしまうのだ。

可愛らしい彼女なのだろう。
自分の可愛げのなさに嫌になる。


最後ぐらいは笑顔でいよう。


「新しい彼女とお幸せにね。皐月ちゃんを好きになる前まで私を愛してくれてありがとう。集くんと一緒にいる時間、すごく楽しかった。……さよなら」


作った笑顔は笑顔になっていただろうか。

すくっと立ち上がると荷物をまとめて振り返らずに扉を開け、閉める。

「ふっ…くっ、はぁ……」

零(こぼ)れ落ちそうになる涙を必死にこらえながら早足で歩く。

歩いて歩いて歩いて、

がくっ

ひたすらに歩いたらヒールが外れてしまった。
足には赤い靴擦れが出来ていた。
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