佐藤さんの憂鬱。
歩いていたところは公園沿いの道で、ヒールを脱いで少し歩くとベンチがあった。

力尽きたようにそこに座ると涙が止まらなくなった。


「っふ、うぇ、」

可愛げのない嗚咽(おえつ)が口から漏れる。

日が沈んだ夜にこんなところにいたらいけないのは分かっている。けれど、帰れなかった。

立ち上がる気力すらもなく、ただただ流れる涙と漏れる嗚咽が収まってくれるのを待つしかなかった。





どれくらい泣いていたのだろうか。
道を歩く人はまばらで、公園で泣いている私を少し道から覗き込むようにチラチラと見ていた。

「はー…」

やっと収まり、深呼吸した空気は秋がもうすぐ終わる、冬が来るのを予感させるようなひやりとした空気だった。

泣きすぎて熱くなった体には丁度いい冷たい風が吹く。
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