佐藤さんの憂鬱。
あーあ、やっぱり変な意地はらないで送ってもらえばよかったかな。

でも、あの時の辛い気持ちを思い出したくなかった。

結構男子の中でも話しやすいと思っていて、仲いい方だと思っていて、だからこそ悲しかった。


「かよちゃん!!!」


ぼーっとしていると、離れたところから私を呼ぶ声が聞こえた。

振り返ると、木村くんが立っていた。


「…どうしたの」


思ったよりも冷たい声が出てしまって焦る。
私だって別に木村くんに冷たくしたいわけじゃない。


「いや、迷ってるんじゃないかなって思って」


…別に迷っていたわけじゃない。


「迷ってはないわよ。ただ、ぼーっとするのが趣味なだけ」
「そっか」

女の子たちにモテそうな可愛い顔をクシャッとして笑った。
頬に出来るエクボが可愛いとか言われてたっけ。

「じゃあ、俺もぼーっとしようかな」

げ、という顔をしてしまったらしい。

「そんな顔しないでよ。傷つくなあ」

そう言うと彼は、ためらいもなく横に座ってきた。
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