佐藤さんの憂鬱。
『なんか話しかけてもバカにされてる気がする』
『ちょっと優しくしてやったらころっと行くかなって思って』


そんな言葉が未だに頭を回る今日この頃。
私はあれから9歳も歳をとり、アラサーの類に含まれるようになった。

それでも、やっぱり多感な時期に言われたあの言葉は忘れられなかった。

あの言葉を言われてから、無関心が無気力に変わったような気がする。


「佐藤さん〜」

ねちっこいハゲ部長が私の名前を呼ぶ。

「はい」

出来るだけやる気のあるような声を出そうと努力する。
でも、やっぱり口からこぼれる返事はやる気の欠片も感じられない。

「佐藤さんさ〜、やる気あるのかな？？最近態度悪いよ〜？？」

この、語尾を伸ばすしゃべり方は好きじゃない。なぜなら、あいつも語尾を伸ばして喋る男だったから。


「すいません。やる気は満ち溢れているのですが、なにぶん態度に出すのが苦手なものですから」

ほぼ無表情で少し眉根を寄せて申し訳なさそうに話す。

「まぁ、ミスはないからいいんだけどね」

ミスで呼んだんじゃないのかよ。時間の無駄だよ。
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