リナリア
出発前日。


兄は自分の部屋で黙々と勉強をしていた。


準備しなくていいの?と声をかけたら
お前と一緒にあとでやるよ。と言われた。


そうやって言われるのも、もう今日で最後。


なんだか実感できずに、
悲しくなって、
勉強してる兄の後ろで
泣いてしまった。

バレないように早く部屋を出ようとしたが、
もう既に兄にはバレていた。

どうした?寂しいのか?と
悲しい顔して笑った。


兄は勉強を中断して、
ベッドに座り、私を呼んだ。

大人しく兄の隣に座った。


またこっちに泊まりにくればいいよ。
俺もちゃんと帰るからな。


と言って、頭を撫でてくれる兄。




本当はね、
涙なんてとっくに引いてた癖に
泣き真似までしてでも
引き止めたかったんだよ。

気付いてって本当は言いたいのに。
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