killer

イアンの声が聞こえないのか、グロッキーな見た目をしたサコスはゆらゆらと頼りない足取りで、嘗ての仲間に近付いていく。


だらりと垂れ下がった四肢からは、止めどなく血が流れ続けていた。


突然、けたたましい数の悲鳴と阿鼻叫喚の電波が、張り詰めた空気の中に飛び交う。


《こ、こちら、第7番隊！ 確保した住民が突然我々を攻撃し始め、っ…………うああああああ！》

《1番隊だ！ 誰か、誰か応答してくれ！ 隠れていた住民が、襲ってきやがった！ ヤられた仲間の様子もおかしい！ 俺たちを襲って、う、ぎゃぁぁぁぁっ》


(仲間が、襲って来ただと……？)


ジェフの脳裏に、最悪の展開が掠める。


「くそっ、」


防弾チョッキを揺らし、駆け足でサコスに体当たりをかませば、グチャァッと嫌な音を立ててボロボロの身体は血溜まりに沈んだ。


サコスだった謎の物体は、「ゔぅぅ……」っと低い唸り声を上げ、再び起き上がろうとしている。


「ジェフ、良くやった！ ギルバート、イアン！ ひとまず、ここから逃げっ……いや、マズイなこりゃぁ」



グレグリーが辺りを見回すと、既に幾多もの死人と化した何かが、狭い路地裏に迷い込んだ彼らを、取り囲んでいた。