killer
「イアン、お前……」


砂利を踏みしめながら一歩ずつ後退り、目の前の人物を警戒するジェフ。


「あああああ!」


ギュルリと白目を剥き、イアンだった者はついに襲いかかってきたのだ。


仲間の身体を撃つことに躊躇いを感じてしまい、抵抗することなく飛び掛かられた背中は地面に強く打ち付けられる。


「ぐっ!」


ふたり分の体重の衝撃がジェフの背に走り、被っていたヘルメットはどこかに転がっていった。


燻んだ金髪を揺らしてすぐに正気を取り戻し、迫り来る牙を銃で受け止める。



「イアン、しっかりしろ! 俺が分からないのか?!」


そんな呼びかけも虚しく、彼の身には死の危険が迫っていた。


「ふっ、」


右脚に力を込めて膝を曲げ、覆い被さっているイアンの腹を思い切り蹴り上げればその身体は数メートル先に吹っ飛んでいった。



仰向けの状態から勢いをつけて両足を地面につけて直立し、再び銃を構える。


「……まさか、任務で失って付けた義足が、こんな形で役に立つとはな」


義足という鉄の塊でなおかつ、かなりの力でキックをお見舞いした筈だったが、微塵も効いていない様子でゆらゆらと立ち上がるイアンを見て、「はぁっ」と短い息を吐く。



「……仲間を蹴るために付けたことじゃないのは、確かなんだが」


青い瞳を動かして視線を広場に移せば、隊長とギルバートが敵に囲まれていることに気付く。


彼らは銃を乱射しながら、本部のある街の入り口へと撤退していた。



「ジェフ! 無事か!? 早く合流……くそっ!」
「マジで何なんだよ、コイツら! 撃ってもキリがねぇ! 」


(そう言えば、さっき……)

ジェフはイアンが敵に襲われた際、眉間を撃ち抜けば絶命したことを思い出す。

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