killer

「自分が説明しましょう。そこのお嬢さんに語らせるには、随分と暗すぎる現実ですからね」


ムッシュと共に襲われていた内のひとり、眼鏡を掛けた白スーツ姿の男性が、名乗りを上げる。


「先ほどは助けて頂いて、ありがとうございました。私はトニー=バートン。45歳のただの郵便局員です。つい先日まで、ゴーンシティにある郵便局に務めておりました。【killer】とは、我々が勝手に名付けたあの人食い化け物のことです。名前が無ければ呼ぶのに不便でしょうからね」


丁寧な物腰でフェミニストを醸し出す白髪のトニーは、過去に思いを馳せて悲しみに暮れるサラを気遣いながら、口を開く。


「ゴーンシティは、ごく普通の観光地でした。……ええ。それも【killer】が現れる、7日前までの話ですがね」