killer
「誰か、車でもヘリでもなんでも良い。街から脱出できる乗り物が置いてある場所を、知っている者はいないか?」


そう問い掛ければ、眼鏡を指で上げた後にトニーがおずおずと挙手をする。


「私、一度見たことがあります。タリック屋敷の屋上に、娯楽用のヘリコプターが置いてあるのを……」


ジェフは頷き、子犬のような弱々しさを醸し出すギルバートに指示を出す。


「ギル、聞いたか? 俺たちは今から、タリック屋敷に向かう。お前も来い、ヘリを使って街から脱出するんだ」


|《わ、分かった。じゃぁ、また後で連絡する》



ザザッと無線機が切れれば、床に散らばった札束を慌ててかき集めていたムッシュが、勇敢に戦った兵士に鼻息荒く詰め寄る。


「タリック屋敷に向かうなんて正気かぁ?! 外には【killer】がウヨウヨいるんだぞ?!」


そんな戯言を気にも止めずに、ジェフは武器のチェックに取り掛かっていた。


「だが、このまま教会に篭っていても、奴らのエサになるのを待つだけだ。俺の銃の弾にも限りがある。残りたいなら残れば良い、無理について来いとは言わない」

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