killer
海外特有の大テーブルに並べ慣れた壮大なスケールの夕飯にフォークを伸ばしつつ、小さなため息を吐く。


「……はぁ。私、もう此処に来て２ヶ月になるんですね」


グサッと刺したポテトをクルクル回してそう呟けば、若夫婦のひとり娘であるティアラが椅子から降りて、パタパタと走り、私の腰に抱き着いてきた。


「やーっ！ ティアラ、サラが居なくなっちゃうの、イヤだよ。サラ？ ずっとここにいてっ」


店仕舞いをする際に彼女の父親も全く同じセリフを言っていたことを思い出し、思わず笑みがこぼれてしまう。


すると、ミッシェルさんも同じことを思い浮かべていたようで、大きな口を開けて笑っていた。


「あははっ。ティアラ、パパと同じこと言ってるわね。でも、そうね。その気持ち、ママも良く分かるわよ」


ティアラの柔らかな髪を撫でながら、「ありがとう」と囁けば、悪ノリしたライアンさんがビールジョッキを揺らして高らかに口を開く。


「いっそのこと、我が家の養子になるかサラちゃん！ ハッハッハ」


優しい人々に囲まれていたこの時の私は、ゴーンシティに溢れる情緒や大らかに流れる時の流れさえも、好きになっていた。


帰りたく無いとさえ、思っていた。



……そう、この日までは。


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