秘密の糸Season1㊤
「でも、再会した時にはもう、俺の知らない美菜だった。
そこで気づいた。
俺達はもう、お互い《過去の人》としてしか繋がりがないことに…」


私も、再会した時はもう…


私の知らない涼汰君だった…。


そして清太君の事だって私は知らなかった…。


 
私が知っていたあの時の涼汰君はもう居ない…。


涼汰君の《今》を、私は知らない。


涼汰君も《今》の私を知らない。


もうお互い《過去の人》なんだ…。


もっと遅くに出会っていれば…。


また、違う道を歩んでたのかな…。


「美菜に突き飛ばされた後、キスした事反省したんだ…。
美菜に相手がいたのに俺は、自分の気持ちを押し付けた。
だからもう一度、ちゃんと会って謝って俺の気持ち伝えたかった…。」


「…そうだったんだ。」 



「…だから、今日で最後にする。今まで困らせてごめんな…。」 


「ううん…。」


「…今までちゃんと…大事に出来なくて…ごめんな…。」


そう言った涼汰君の顔は、また悲しそうだった…。


そんな顔…。見せないで…。


私は、胸が締め付けられた。


「…私も、突き飛ばしてごめんなさい…。
彼女と幸せになってね…。今までありがとう…。さようなら…。」


「ああ、新川さんも…。彼氏と幸せにな。」


「さようなら。」


これでもう最後。


《新川さん》


そう呼ばれたのが私達の関係が切れた合図だ。


そして私は、公園を出た。 


ポタ…


その時、一粒の雫が落ちた。
< 238 / 642 >

この作品をシェア

pagetop