秘密の糸Season1㊤
ヒュッ


「危ない!!」


遠くから、叫び声がした。


「え?」


その時、あたしの目の前に、フリスビーが飛んできた。


「きゃっ!」


(当たる…!)


目をつぶったその時、


…シーン


「あ…れ」


(当たってない…?)


「大丈夫?村田さん?」


顔を上げると、


新堂さんが片手でフリスビーをキャッチしていて、


あたしは新堂さんに抱きついていた。


「…へ?」


すぐ近くに、新堂さんの顔があった。 


(ちちちちち、近ーい!)


「だ、大丈夫です!ありがとうございます!)」


あたしはとっさに、下を向き新堂さんから離れた。


その時


「ご、ごめんなさい!あ…、あ当たりましたか?」


男の子二人が、泣きべそをかきながら走って駆け寄ってきた。


「僕も彼女も大丈夫だよ、心配してくれてありがとう。もう泣かなくて、良いからね。」


新堂さんはそう言って、男の子二人の頭を撫でフリスビーを返した。


「すみませんでした!ありがとうございます!」


その男の子達は頭を下げ、そして帰って行った。


(優しいな…。)


《彼女》


そう言われたのが嬉しかった。


違う意味だろうけど…。


「村田さん?もう大丈夫だから。」


その時ボーッとしていたあたしを、新堂さんは笑って背中をポンポンしてくれた。


触れられた背中が熱くなった。
 

「ちょっと涼しくなって来たし、歩こうか。」


「は、はい!」


こうしてあたし達は、公園を歩き続けた。
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