秘密の糸Season1㊤
高校生になってから、あたしは彼氏が出来た。


雪都とはもう会わなくなっていた。



ある時学校帰りで、学ラン姿の雪都を見つけた。


「雪…」


声を掛けようとしたその瞬間、


「ゆーきと♪」


雪都の腕に、女子中学生が飛びついてきた。


(嘘…!雪都、彼女いたんだ…。)



あたしはその姿を見て、胸がチクリと痛んだ。


(何これ…。)


その時、立ち止まるあたしに雪都は気づいた。



「…梨絵?」


「雪都…。」


その時、女子中学生があたしを睨みつけた。


「雪都この人誰?」


「ああ、ただの幼なじみ。」


ドクン…


その言葉を聞いて、さらに胸が痛くなった。


正論なはずなのに、胸が痛い。


けどあたしは、いつも通りの普通の態度で接した。


「雪都!あんた、彼女作るなんて生意気ー!」


「うるせーよ!あ、もしかしてお前、彼氏いねえの?かわいそう…」


「バーカ!いるっつーの!」


「あっそ、残念」


あたしはその時、これ以上この空気にいたくなかった。


「彼女泣かすなよ!じゃーね!」 


そう言って、あたしは走り去った。


走り去った後、涙が出た事に気づいた。


「やめてよ…。止まってよ…。」


けど、次から次へと涙がポロポロ溢れ出た。 


「…止まってよ。」


だけど涙は、止まってくれなかった…。


そして…ようやく…今更…自分の気持ちに気づいた。


あたしは、本当はずっと雪都のことが好きだったんだ…。


小学生の頃、助けてくれたあの時から…


本当は…


だけどもう、気づいても遅かった…。
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