秘密の糸Season1㊤
「じゃあ、後でね」


「はい!」


そしてあたしは新堂さんと入口で別れた。


下着を脱ぎ、浴室に入った。


「あたし…。今日あの部屋で新堂さんと寝るんだ…。」


何か起きるなんて期待はしていない…。


そんな事、出来るはずがない…。


分かっているのに、どこかで期待をするあたしは本当最低だ。


それなのに、身体を入念に洗ってしまう…。


「はあ…。」


何でこんな時に、やらしい事考えてしまうんだろう…。


そしてあたしは露天風呂に浸かった。


ちゃぷん


「気持ちいい…。」


身体がすごくリラックス出来た。 


その時、窓から月が見えた。


この景色を見るのも、


新堂さんと過ごすのも明日で最後…。


明日になればもう全て、終わるんだ…。


もう時間がない…。


そしてあたしは風呂から上がり、浴衣に着替えた。


髪を乾かした後、入口に戻ったその時


新堂さんがソファに腰を掛け座っていた。


(前髪下ろした所、初めて見た…。かっこいい…。)


あたしはその姿にドキッとしてしまった。


「お待たせしました…。」


「ああ…うん」


「前髪降ろしたの、初めて見ました。」


「え?あ、そっか。いつも髪上げてるもんね俺。
幼いでしょ?」


上げてる時も素敵だけど、下ろしてる時も素敵だ。


「…素敵ですよ。」

「…はは、ありがとう。」

そしてあたし達は再び、部屋に戻った。
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