秘密の糸Season1㊤
【美菜side】


『はい』



少し低い、優しい声…。


懐かしい感じがした…。


まだ、そんなに経っていない筈なのに、声を聞くだけでもうずっと聞いていない気がした。


『…久しぶりだね、美菜』


私の名前を呼ぶ、新堂さんの優しい声…。


胸が、締め付けられる…。


『…突然掛けてごめんなさい…。私、ずっと謝りたくて…』


『ん?』


本当にごめんなさい…!私、雅昭さんにひどい事を…!』


『いいよ、何か理由があるんでしょ?』


『…あの日、お見合いの話を聞いてしまって…。』


『…お見合い?』


『私、本当は新川病院の娘で…跡継ぎで…
父の決めた日と、婚約が決まってるんです…。
黙っていて本当にごめんなさい…!』


『…そうだったのか…。』


『…私その日の夜、びっくりして家を飛び出してしまって…
その時…中学の時に付き合ってた元カレに会ったんです。』


新堂さんは静かに聞いてくれた。


『…それで?』


『その時、元カレに新堂さんとの事ちゃんと話せって言われたんです…。
父、すごく厳しくて…。
まだ付き合っていた事、両親に話してなかったんです…。』


『…そっか。』


『その後自宅に戻り、私は父に全部話しました。
だけど…許して貰えなくて…。
別れるように、電話をされました…。
横で監視されていて…。私…すごく怖くて…。
ちゃんと言えなくて…。
新堂さんの意見も聞かずに…。
あんな事を…本当にごめんなさい…!』


『そうだったのか…大変だったんだね…。
側にいれなくて、ごめん…』


『新堂さんは何も悪くありません…!本当にごめんなさい…!』


『良いよ、話してくれてありがとう。
…お見合いはどうなったの?』


『…その後、お見合い当日になってする事になりました。
でも、その場所に元カレが現れて…。
…私を、連れ去ってくれたんです…。
新堂さんのフリをしてくれて…。
結果、その場ではなくなりました。』


『そっか…。』


『はい…本当に今更でごめんなさい…。』


『もう、いいよ。』


『…新堂さん』



『ん?』


『私…』


言うんだ、全部


『…新堂さんに、ずっと隠していたことがありました。』
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