秘密の糸Season1㊤
「君、ご親切にどうも。
けど僕はまだ最後まで道聞けてないんだ。
だから、邪魔しないで貰えるかな?」


「チッ…どけ!」


そう言って裕弥は、わざとあたし達の間を通りぶつかってきた。


「きゃ!」


その時、あたしはバランスを崩してしまった。


(コケる!)


「危ない!」


「あ…。」


(手首…。)


その男性はあたしの手首と腰を掴んで、支えてくれた。


「…大丈夫?」


「は、はい…。」


掴まれた手首が熱かった。


「あ、ありがとうございます…。」


「怪我、してない?」


「はい…。すみません…。巻き込んでしまって…。」


「気にしないで、君の方が大事だから。」


【君の方が大事】


その言葉が、胸に響いた。


そんな事、初めて言われた…。


「そんな事、初めて言われました…。」


気づいたらあたしは、口に出していた。


「え?」


「あ、いや、すみません…。」


(何言ってんだろ…。あたし…。)


その時
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