秘密の糸Season1㊤
「円花」


声がした。


振り返ると、晋ちゃんが立っていた。


「晋ちゃん!」


その時


「あ、じゃあ私達はこれで~」


皆が逃げるように帰る中、


舞由香が【頑張れ】と口パクをしてきた。


(舞由香ったら〜…)


そして、舞由香達は帰って行った。


「あ、悪い…。話し中だった?」


「ううん、大丈夫だよ、サークルは?」


「今日は早めに終わったんだ。だからその…
一緒に帰らないか?」


そう言った晋ちゃんの顔は、少し赤かった。


「え!?」


私は、突然のことでびっくりしてしまった。


「嫌?」


「う、ううん。」


「じゃあ、帰ろ。」


「う、うん。」


こうして私達は、一緒に帰ることになった。


私は、後を追うように晋ちゃんについて行った。


そんな私に晋ちゃんが気付き、


「ん」


手を出してきた。


「え?」


「円花は俺の彼女だろ?」


そう言って晋ちゃんが、差し出した手を伸ばした。


「あ、そ、そうだよね。」


私は緊張しながらも、その手を握った。


握った手が、さらに私を緊張させた。


小さい頃、手を繋いだことは何度かあった。


けどあの頃とは全く違う…。


その時、晋ちゃんが口を開いた。


「…なんかさ」


「え?」


「小学生の時を思い出すよな。」


「…そ、そうだね。」


一気に、懐かしさと恥ずかしさが込み上げてきた。


低学年の頃は、よく一緒に手を繋いで歩いてた。



晋ちゃんのあの手に…私は安心していた。



手を繋ぐことに、深い意味なんてお互い全くなかった。


だけどこうして、【恋人】と言う意味で今、


手を繋ぐのは恥ずかしい…。


けど、嬉しい…。


そんな気持ちだった。


「円花、明日何か予定ある?」


「予定?ないよ?」


「じゃあ…。明日、遊びに行かないか?」


そしてまた、晋ちゃんの顔が赤くなった。


「え!そ、それってデート!?」


「そうゆう事になるな、嫌?」


その時、晋ちゃんが甘える様な目で私を見つめてきた。


(…うっ、その表情はズルいよー…。)


「嫌じゃないよ!嫌な訳ないよ!もちろん行きます!」


「分かった。じゃあ、明日な。もう円花ん家、着いたし。」


「あ、本当だ…。」


「じゃあな。」


「うん!送ってくれてありがとう!!」


そして、晋ちゃんは帰って行った。


「私、本当に晋ちゃんの彼女になったんだ…!
まだ信じられない…。
デートかあー!緊張するな…。
こうしちゃいられない!色々と準備しなきゃ!」


そう言って私は、ドアを開けた。
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