午前0時、夜空の下で。 ―Short Story―
頬を染めた心に、妃月はゆっくりと顔を近付けた。

息を呑んだ心の口唇を、赤い舌で舐める。

「――相変わらず極上だな。この血の香りだけは、どこにいようとわかる」

真っ赤になって硬直している心の耳元で、さらに囁く。

「先に休んでいろ。夜明けにじっくり血を味わってやろう。今宵は意識を無くすなよ」

とうとう腰が抜け、座り込んだ心に、妃月は凄絶な笑みを向けて立ち去った。
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