午前0時、夜空の下で。 ―Short Story―
ノースヴァン家の人形姫
月が穏やかに輝く午前3時。
シリアはいつものように、無表情でお茶の用意をしていた。
そんな時。
「ねぇシリア。あなたがこの城に来たのは、陛下の側室になるためだったって……本当?」
おずおずと問い掛けられ、ガシャリとカップを落としてしまう。
適度に冷まされた紅茶が、シリアの手を濡らし、テーブルクロスを紅く染めていった。
珍しい失敗に、問い掛けた心は目を丸くする。
「シリア!? 大丈夫?」
部屋の外に立っていた兵士に頼み、氷を浮かべた水を持って駆け寄る。
「ある程度冷ました紅茶でよかったね。火傷、そんなにひどくないみたいだよ」