午前0時、夜空の下で。 ―Short Story―
――ノースヴァン家――
「今日も相変わらずの無表情。まったく……ジュリアもあなたもどうしてそんな子に育ってしまったのかしら。
ノースヴァン家は終わりだと他家の貴族が噂していること、あなたも知っているでしょう?」
整った美貌を苦々しく歪め、シリアの母親であるユースリアは溜息をついた。
シリアはそんな母親を、ただ視界に入れていた。
ノースヴァン家は、カザリナの生家であるアクセス家と同等の地位を築いている。
占いや予知といった不思議な能力に恵まれ、その血は誉の雫と讃えられていた。
王の側室候補として真っ先に名の挙がる由緒正しき家である。
しかし最近、ノースヴァン家が没落したと噂され始めた。