午前0時、夜空の下で。 ―Short Story―
そして賭けに勝つのは
しんと冷たさが冴え渡る回廊に、カツカツと硬質な音が響く。
ドレスを軽く持ち上げ、ジュリアは一人で城内を闊歩していた。
月明かりを頼りに、真っ直ぐ伸びた回廊を突き進む。
時折周囲を見渡し誰もいないことを確認すると、彼女は小さく口角を上げた。
――まだ、気づかれてはいないようね。
満足げに微笑んだまま、ジュリアはさらに足を早める。
貴族の家に生まれたジュリアにとって、独りきりの時間は何よりも得難いものだ。
屋敷では常に侍女が付き従い、一歩外に出れば兵士が着いてくる。
貴族の娘なら当然とされる環境だが、好奇心旺盛なジュリアにとっては窮屈で仕方なかった。
そんな彼女に訪れた絶好の機会が今日――魔王陛下の城で行われる夜会だ。