午前0時、夜空の下で。 ―Short Story―
初代魔王の時代から同じ一族が庭師を務めていることでも有名な王城の庭園は、華やかというよりも清廉な美しさを感じさせる。

実家の煌びやかな庭に慣れ親しんでいたジュリアは、その優美さに溜息を零した。

それと同時に、自分がこの場所に相応しくないことを再認識してしまう。

落ち着いた美しさを誇る黎の中でも、王城は特に神秘的な美しさを秘めているのだ。

ほかでは際立つジュリアの存在が、ここでは浮いてしまっている。

この場所に似合うのは、賢くて見目麗しいだけの女ではなく、もっと――……



思案に耽りながら庭園の中を散策していたところで、ふと気配を感じ立ち止まる。

「久しぶりね、ジュリア」

「カザリナ……」

青いドレスを身に纏った彼女は、ゆっくりとジュリアに歩み寄った。
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