午前0時、夜空の下で。 ―Short Story―
低い声をもつそれは、落ちる身体を上手く背で受け止めて部屋から離れた。

柔らかく温かい背に力が抜け、ジュリアはなんとか動くようになった手でそれにしがみついたまま、そっと目を閉じた。





「助けて頂き、有り難うございます」

微力な魔力しか感じられない場所で下ろしてもらい、ジュリアはようやく恩人の姿を目にすることができた。

しなやかな肢体をもった、美しい灰狼である。

青灰色の瞳を向けられ、どうしてかジュリアは目を逸らしたくなった。

獣族を目にするのは初めてではないのに、灰狼を前にすると妙に緊張してしまう。

「……姫、我に触れられることは屈辱やもしれぬが、先立ってはああするしかなかった。
ほかの者をわざわざ呼びつけていては間に合わなかっただろう」
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