午前0時、夜空の下で。 ―Short Story―
耳に灰狼の声が届いた途端、ジュリアは弾かれたように顔を上げた。

「なぜそのようなことをおっしゃるのです!? 私はあなたに助けて頂いて、嬉しかったのに!!」

「姫?」

灰狼は意表を突かれたかのように瞬いてジュリアを見つめた。

青灰色の瞳と目が合ってしまい、ジュリアの頬が淡く色づく。

しかし今度は、決して目を逸らそうとはしなかった。

相手の瞳に映る自分の姿を見つけ、ジュリアの鼓動が速くなる。

彼女は何も知らぬ小娘ではない。

だからこそ、カザリナと重なる自分自身に戸惑いを覚えた。

するものではなく落ちるもの、とは聞いていたけれど。

「――私はノースヴァン家の娘、ジュリアと申します。
改めてお礼を申し上げます」
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