午前0時、夜空の下で。 ―Short Story―
真紅の薔薇は声もなく
――頼みがあります。
クロスリードから話を持ちかけられた時、カザリナはまだ少女の存在を知らなかった。
「……まあ! どうなさったのですか、クロスリード様」
唐突にアクセス家の屋敷へ現れたクロスリードは、真っ青に青ざめ震えていた。
こんなクロスリードを見たのは初めてで、カザリナは思わず彼の身体を支える。
とりあえず中へと促してみたが、クロスリードはエントランスホールで崩れ落ちた。
「助けてほしいのです、カザリナ様……」
クロスリードには珍しく弱弱しい声だ。
カザリナは傍らに膝をつき「どんなことでもおっしゃって」と震える背を擦った。