午前0時、夜空の下で。 ―Short Story―
そしてまた、その愛が蘇ろうとしている。

相手は天族であった十六夜姫の魂を継ぐ――人間の少女。

――陛下が人間の小娘との愛に溺れてしまう……?

まさか、とカザリナは首を振ろうとしたが、クロスリードの状態が魔王の危機を物語っていた。

カザリナたち魔族の王であり、すべてを捧げるべき王に迫る忌まわしき女。

暗い感情がカザリナを塗り潰す。

――私たちの陛下なのに。

あの方は、私たち魔族のすべてなのに。

なぜ初代王妃に……なぜ人間の小娘に奪われなければならないの!

激高しそうになって、カザリナは深く息をついた。

落ち着かなければ、と首を振る。

常とは違う状態のクロスリードの言葉を、鵜呑みにするわけにもいかないだろう。

まずはメイジーに陛下の状態と人間の女を確認させようと、カザリナは頭の中で段取りを整えた。
< 48 / 72 >

この作品をシェア

pagetop