午前0時、夜空の下で。 ―Short Story―
「陛下の寵姫と噂されている私だからこそ、真実味が増すというもの。私以上に相応しい者なんておりませんわ!
……それに、嫁ぐ時も……クロスリード様ならすべてを知っていらっしゃるから、大丈夫でしょう?」

心臓が大きく鼓動しているのを感じながら、カザリナはクロスリードを見つめた。

こうして二人の今後を口にしたのは当然初めてだ。

アクセス家もルカレイン家もいずれそうなってくれれば、と匂わす程度で、はっきりと二人の婚約を口にしたことはない。

そんな状態でカザリナがクロスリードとの未来を囁けば、彼女から婚約の申し込みをしたようなものだった。

クロスリードもさすがに驚いたようで、ぽかんと口を開けたまましばらく呆けていたが、やがてふっと笑いを零す。
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