午前0時、夜空の下で。 ―Short Story―
「可愛い妹に、先を越されるとは情けない」

「私は妹ではありません」

「これは失礼した」

クスクスと笑いながら、クロスリードはカザリナの手を取った。

恭しく持ち上げて、彼は足元に跪く。

流れ落ちる銀色の髪が、切ないほどに愛しかった。

じんわりと湧き起こるこの感情を、何と呼べばいいのだろうか。

まるでそう、家族のような。

「すべてが終わったら……私の妻になっていただけますか」

彼に抱く想いは、妃月に対する激しい恋情ではない。

だが、穏やかに積み重ねられた愛情もまた、一つの形。

「……喜んで」

誰に告げるわけでもない、密やかな婚約の言が交わされた。






しかし、事は意外な展開へと転がった。

「にげ、られた?」

メイジーからの報告に、カザリナは愕然とする。
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