午前0時、夜空の下で。 ―Short Story―
それに――

「クロスリード様が疑われるようなことがあったら……」

カザリナにとって最も恐ろしいのは、クロスリードが王から遠ざけられることだった。

一族を含め、己も、また自身に仕える者たちも、クロスリードに与すると決意した時点でそれ相応の罰を受けることは覚悟できている。

人間の少女の存在は王に脅威を与えると、大臣たちも危険視していたのだ。

国の要職に就くアクセス家の当主が、娘の世間体を天秤にかけてでも、人間の少女を排そうとしたように。

一方で王の傍からクロスリードが離れることだけは防がねばならなかった。

王に育てられたクロスリードほど、彼を理解できる者はおらず、名実ともにクロスリードは王の右腕である。

彼の喪失は、王にとっても国にとっても痛手となるだろう。
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