午前0時、夜空の下で。 ―Short Story―
圧倒的な力の差。

ニヤリと笑う男に恐怖心が芽生える。

じわりと目元が熱くなったとき、思いもよらぬ声が響いた。



「誰の女に手を出している?」



誰もを陶酔させる、魅惑の響き。

あまりの驚きで、男の手が緩む。

気づいたときには、力強い腕に抱き寄せられていた。

男はそんな心を、呆然と見やる。

「へーか……?」

否、まさか。

男は頭の中で否定するものの、目の前に立っているのは絶世の美貌。

実際に魔王を見たことはないが、こんな容姿をもつ者など、魔王以外には有り得ない。

しかし、魔王が下働きの女をわざわざ庇うなど……有り得るはずが、ないのだ。
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