午前0時、夜空の下で。 ―Short Story―
世界中の美姫たちが求めてやまない王。

そして、どんな女にも特別な感情を抱かなかった王。

そこでふと、腰を痛めた庭師の言葉を思い出す。



「今日は王妃様にお会いできないのか。残念なことだ」



それはそれは悲しげに呟かれたその言葉。

王妃なんかいねぇだろ、と馬鹿にしたが。

今思えば、魔王からの寵愛を一身に受ける人間の女がいたはずだ。

彼女に対する扱いは、王妃に等しいらしい。

……まさか。

「――私のモノに手を出すなど、いい度胸だな。今すぐ死にたいか」

鼓膜を震わせたその声に、男は青ざめた。
< 7 / 72 >

この作品をシェア

pagetop