眠り姫の憂鬱。
自分の席へ歩みを進めると、私から目線を外す人もいれば、そのままじっと観察するように見てくる人もいて居心地が悪いったらありゃしない。
ここに来て遅れてきたのが失敗だと気付いた。
ああ、もう少し早くそれに気付いていれば。
私が椅子に座るタイミングで再び話し合いがスタートする。
どうやらまだ何の劇をするのか、決まってないらしい。
「ピーターパンは?」
「なんでそのチョイスっ?」
「飛べないピーターパンになっちゃうじゃん!」
「いっそ吊るしちゃう?」
私は劇に出るつもりがないから何の劇でもいいのだけど、配役が多い劇だと出演しなくちゃいけない可能性があるからそれだけは避けたい。
でも目立つのは苦手なので大勢の前で意見を言ったりすることもできない。要は流れに身を任せるのみだ。
「雅は何やりたい?」
「えっ、私っ?」
唐突に真依に話を振られて戸惑う。
「私は、…なんでもいいかな」
「ふーん」
私は自分の意見を、真依にさえ言えなかった。