眠り姫の憂鬱。


ただにこにこと笑って、その場に溶け込むことに意識を集中させる。


と、ひとりの女の子が声を上げた。

「あ、そうだ!」

その声が何故かほかの声よりもはっきりと聞こえる。


「眠れる森の美女とかどう?」


私はその題名を聞いて、血の気が引いていくのを感じた。

だって…、いや考えすぎかな?


「いいじゃん!」


クラスのみんなが賛成を示していく。

私はひとり、焦りを隠して笑顔を作る。

たまたまだよね?

別に珍しいお話じゃない。こういう劇でやるものって童話が多い気がするし、眠り姫は人気だってある。

そうだ偶然だ。


「でもさ、お姫様役なんて恥ずかしくてやりたくなくない?」

「いやいや、姫役はもう決まってるじゃん」


ドクンと心音が響いた。


「ね?"眠り姫"っ」

「え、いや…、そんな私には荷が重いよ」


背筋に冷や汗が伝っていく。



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