眠り姫の憂鬱。


と、その時、ある声が教室内の時を止めたようにみんなを鎮めた。


「葉月にだって選ぶ権利あるでしょ」


顔を上げて声の元を辿れば声の主は、くっきりとした二重まぶたに通った鼻筋、小顔でいかにも女子が好きそうなアイドル顔の男の子だった。

その男の子は笑顔のまま続ける。


「葉月に無理矢理やらせるのは可哀想だよ」


ね?とこちらに向けて同意を求めた彼に対し、私はただただ見つめ返すことしか出来なかった。

こんな人、同じクラスだったんだ。

名前も存じていないのだけど、助けてくれて本当に助かった。


「い、いや私たちは別に、仲間に入れてあげようと思って」

「そ、そうだよ。無理矢理なんかじゃないよ吉川(よしかわ)くん!」


彼はたぶんクラスで人気なんだと女の子たちの反応を見て悟った。

いや、クラスだけじゃないのかもしれない。



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