眠り姫の憂鬱。


「そう?じゃあ葉月はヒロイン役やりたいの?」

「わ、私は…、遠慮しておきます」

「なら、ヒロイン役は葉月以外の子がやればいいよね」


そこからは、彼が笑顔を浮かべたまま淡々と進行役を務めてすんなりと配役が決まった。

みんなをまとめる力があるんだなあと私は初めて目にした男の子に尊敬の念すら抱いた。


私は大道具や小道具を作る役目をなんとか勝ち取り、劇に出ずに済むことになった。



「雅、大丈夫?」

「うん。さっきはありがと、真依」

「いやいや、私はなんの力にもなれなかったし」


なんで私の言うことは聞いてくれないくせに吉川だと聞くかなあ、と真依は拗ねている。

ふと、当の彼を見るとちょうど鞄を持って教室を出るところだった。

私はお礼を言わねばと、慌ててその背中を追う。



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