眠り姫の憂鬱。
そして、彼の腕を掴み引き止めた。
「吉川くん!さっきはありがとう!」
すると彼はゆっくりと振り返り、少し目を丸くした。
あれ?名前間違えたりしちゃったかな?
クラスの子も真依も確かに吉川くんって言ってたから、間違えてないはずだよね…?
「吉川くん…?」
確認するかのようにもう一度名前を呼んでみると、吉川くんは我に返ったらしく、さっきと同じ笑顔を浮かべた。
「どういたしまして」
「吉川くんは主役だったよね?頑張ってね!」
「うん。葉月もね」
「頑張る!バイバイ!」
去っていく吉川くんを見送ると、真依が私の背後からひょっこり姿を現した。
「やっぱり吉川っていけ好かないなあ」
眉間に皺を寄せ、真依はそう言う。
「真依って吉川くんのこと嫌いなの?」
「嫌いっていうか…なんかあの涼しい笑顔も胡散臭い。信用ならん!」
吉川くん、酷い言われようだな。