眠り姫の憂鬱。



楓の隣に行こうと、勢いをつけて階段を上る。

それを見下ろしながら待ってくれている楓は今日も優しい。



「わっ」


最後の段を上った時に、足を滑らせてしまい、体が傾いた。

わりと高いところまで上っていたから、後に来るであろう痛みを想像し、きつく目を閉じた。

もし落ちてしまっても楓はいるから、意識を失う程度ならすぐに保健室か病院に連れて行ってもらえるはず。大丈夫だろう。


だけどそんな思考から現実に戻されるように、強く腕を掴まれ引き寄せられたのがわかってパチッと目を開く。


「あっぶねえな!」


私の腕を掴み焦った様子の楓がそこにいた。


「落ちたらどうすんだよ!気をつけろって言ってるだろ!」


歪めた顔さえも綺麗で見とれてしまう。

はあ、今日もかっこいい。


「おい、聞いてんのか?」

「ふふっ、聞いてるよ!助けてくれてありがとう。楓はいっつもヒーローだよ!」



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