眠り姫の憂鬱。
楓は、本当にわかってんのかよ、って言いながら私を置いて再び階段を上り始めた。
私も楓に追いつこうと、一段飛ばしで上ろうとしたのだけど、いきなり楓が振り返ってきた。
「お前、危ないから普通に上れよ」
楓は兎にも角にも心配性だ。
「でもさ、楓に追いつこうとしたらこうするしかないじゃん」
「はあ…、わかったよ。もう少しゆっくりにする」
わーい、と言いながら楓の腕を掴むと楓がビクリと肩を揺らした。
「おまっ、何して…」
「え、だって一緒に上ってくれるんでしょ?なら腕も組むし手も繋ぐでしょう!」
「そんな決まりごとねえよ!」
「ちぇっ」
あんまり嫌そうにするので、仕方なく腕を離す。
つれないなあ。
私は抱きつきたいとさえ思っているというのに、楓は1ミリとも思ってなさそう。